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【遠距離介護のストレス】 高齢者の免許は取り上げるべき?

【遠距離介護のストレス】 高齢者の免許は取り上げるべき?

現在、高齢者が運転免許証を更新する際には、若い世代には課せられていない高齢者教習というプロセスがあります。これらをクリアしなければ、高齢者は免許を更新することはできない制度となっているのです。

こうした試みは75歳以上を対象としており、高齢者による事故が増えていることが背景となっていますね。

増える高齢者の交通事故を防ぐために、高齢者の免許をとりあげる理由とメリット・デメリットについてお伝えします。

 

増える高齢者の事故と免許返納の実態は?

 

高齢者による死亡事故発生件数は、残念ながら増え続けています。75歳未満のドライバーによる死亡事故は減少傾向にありますが、80歳以上は増加傾向にありますね。つまり、年齢が上がることによって死亡事故を起こしてしまうリスクは高くなるということです。

そのため近年では都市部を中心に、運転する必要がないドライバーは自主的に免許の返還をするケースが増えています。

 

しかし、すべてのドライバーが自主的に返還するわけではありません。

車での移動に慣れている人にとっては、車は必需品だと考えているでしょう。それに住んでいる場所によっては、車がなければ生活できない所もありますよね。その場合には、認知症の初期症状が出ていても運転してしまう人はいるでしょう。

 

高齢者から免許を取り上げるという取り組みは、すべての高齢者から免許を一斉に剥奪しようというものではなく、認知症の症状を患っている高齢者を早い段階で発見して免許を更新させないことで、事故を未然に防止しようという目的があります。

 

 

高齢ドライバーの実車試験検査とは?

 

警察庁では2022年から、75歳以上の高齢ドライバーに対して実車試験検査も導入する見通しとしています。ちなみに試験的に、実車試験検査と同じ内容の検査を実際に高齢者に実施したところ、なんと4人に1人は1度では合格できなかったのだとか。そのため、高齢者からは免許を取り上げることを目的としているのではないかと不満の声が上がっていますね。

 

この実車試験検査は、75歳以上の高齢者全員に適用されるものではありません。過去3年間に、警視庁が定める項目の事故や違反を犯した人が対象となります。

 

違反項目の中には、速度超過や追い越し車線をはみ出しての通行、優先道路の進行妨害、前方不注意、ながら運転などがあげられます。また、左折の際に事前に左に寄らなかったとか、禁止されている場所を横断したり後退したりUターンしても、違反事項に該当してしまいます。

 

これらの違反をすると、免許更新のタイミングで実車試験検査を受けることになるわけですが、自身が対象になるかどうかは過去の違反状況を確認すればわかるため、事前に知ることができます。

 

検査は自動車教習所内のコースを利用して行われ、免許が有効期限で失効する6か月前から受験できます。

 

一度で合格しなくても、何回でも受験できるわけですが、合格できなければ免許を更新できません。車内にはドライブレコーダーを搭載し、ドライバーのクセをチェックしたり、注意不足になりやすいシーンをリストアップしていきます。そのうえで、そのドライバーにあった適切な指導をするというのが、この試みの目的ですね。

 

認知症高齢者の免許はどうなっている?

 

現在でも、認知症の疑いがある高齢者には免許更新をさせないというフィルタがかけられています。

 

これは認知機能検査と呼ばれるもので、75歳以上の高齢者が免許更新する際に行われます。認知機能に問題ないと判断されれば、75歳未満の高齢者とともに高齢者講習を受講したうえで免許の更新ができます。ただしこの高齢者講習でも、2時間の実車指導が含まれているのが特徴ですね。

 

教習所で受ける認知機能検査によって、認知機能が低下していると判断されると、どうなるのでしょうか?

低下の恐れがあると判断された場合には、高齢者講習の中でも3時間の時間をかけて実車指導と個別指導を受けることになりますね。ただしこの場合には、講習を受ければ免許の更新はできます。

 

教習所で認知症の疑いありと判断されると、講習を受けただけでは更新することはできません。この場合には、医師から認知症ではない旨を診断書として発行してもらうことが必要となりますね。

 

新しく実車試験検査が導入されても、これまでの認知機能検査のプロセスがなくなるわけではありません。これまでのプロセスに加えて、上記した違反歴のあるドライバーには、臨時認知機能検査が課せられることになります。そこで認知機能が低下していると判断されると、個別指導1時間と実車指導1時間で構成されている合計2時間の臨時高齢者講習を受ける必要がありますね。

 

高齢者の免許更新の際に必要となるフィルタの数を増やすことによって、更新したくてもできない人の数は増えると予想されますよね。社会全体としては安全になって良いかもしれません。しかし高齢者とその家族にとっては、必ずしも良いことばかりではありません。

 

高齢者の運転免許を取り上げるメリット・デメリット

 

高齢者から免許を取り上げることには、メリットとデメリットがあります。最大のメリットはなんといっても、高齢者による事故が減るという点ではないでしょうか。ペダルの踏み間違いによる人身事故をはじめ、ハンドルをうまく切ることができずに衝突する物損事故などは、運転するために必要な技能や迅速な判断力を持たない高齢者がハンドルを握らなくなることによって、幾分かは防止できそうですよね。

 

しかし、高齢者から免許を取り上げるということは、その高齢者がその後は運転できなくなるということでもあります。都市部なら、電車やバスなど公共の交通機関を利用すれば、少しだけ不便になっても、これまでと同じ生活ができるでしょう。しかし地方で暮らす高齢者は、車がなければどこにも行けないというケースは少なくありません。バス停や電車の駅まで行くにも車が必要と人もたくさんいるでしょう。その場合、運転できなくなることによって日常生活が立ち行かなく可能性がありますよね。

 

その負担は、高齢者の親を持つ子供へとのしかかってしまいます。移動する手段をなくした親が、単身で生活できなくなったために子供との同居を余儀なくされる世帯はあるでしょう。すでに自身の家庭やライフスタイルが確立されている子供にとっては、親との同居によって受ける精神的・体力的・経済的な負担が大きくなってしまいます。

 

また子供と同居をしても、子の世帯が共働きでは、平日に高齢者を送迎する人はいません。そのために、どちらかが仕事をやめて家庭に入るという苦渋の決断を迫られることも考えられますよね。

 

高齢者の運転免許を更新しにくくすることは、社会にとっては事故発生件数が減るというメリットがある反面、その後の高齢者の生活を社会がどのようにサポートするかという点とも密接な関係があります。この点に関しても、自治体が制度を整備することが求められていますね。

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